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老いるにオイル [老後]

油が切れた自転車に乗ると、リズミカルな音を出しながら重いべダルを漕いで乗らなければならない。こういう時に、チェーンやギヤ等の回転する箇所にオイルをさすとかなり良くなり、ペダルも気分も軽くなる。人間も老いてあちこち油切れが始まったら、老いに効くオイルがあったらなあ、と思うのだがなかなか見当たらない。田舎の兄が「グルコサミンを使い始めて、膝の調子が良くなった」と言っていた。それでも年に一度は膝に注射をして貰わないと痛くて歩けなくなるそうだ。畑作業が好きなので、中腰の姿勢になる事が多いのが原因なのかも知れない。老人は、もう何十年も体を酷使して来たので、膝や腰の調子が悪くなるのはやむを得ないのだろう。私はバドミントンが出来る位なので、体だけは丈夫でまだまだ酷使に耐えそうだ。頭は酷使して来なかったのだが、どういう訳か調子が悪い事が多く、最近人の名前が出てこなくて閉口してしまう。


在る日、車で我が家に戻ろうとしたら、我が家の10メートル手前をゆっくりとお婆さんが道の真ん中を紙を見ながら歩いていた。クラクションを鳴らすのが嫌なので、ユックリとお婆さんの後に続く。すると我が家の玄関の前で立ち止まって表札を見ていた。「我が家に用事かな?」と思っていたら、玄関脇の駐車場に入ってしまい、なかなか出て来てくれない。これでは駐車する事が出来ないので困ったなと思ってたら、隣家に向かったのでやっと駐車出来た。車から降りると、又お婆さんが我が家の玄関先でうろうろしている。手に封筒と名簿らしき紙を持っていたので、ピンと来た。「町内会費の集金ですか?」と声をかけたら、満面の笑みで「そうなのよ」との返事。町内会費は3600円なので、4000円渡して400円のお釣りを貰おうと右手を出したら、どうしても財布を持っている左手に渡したいらしく「ごめんなさいね」と言いながら、無理やり私の左手にお金を置いた。領収書を頂けると思ったがそのまま行ってしまった。名簿に印もつけなかったので、もう彼女の記憶に頼るしかない。次の日、チャイムが鳴ったので玄関を開けると別のお婆さんが立っていて「町会費を集めに来ました」と言われたので「昨日、お婆さんに払いましたよ。領収書は貰えませんでしたが」と言うと「そうですか、あの人ぼけちゃってるから色々忘れるのよね」と言って帰って行った。今年は二人のお婆さんが町内会の班長にさせられたのだろうが、お二人共高齢なので気の毒である。、


町内会ではゴミ収集所の掃除当番を交代で行っており、掃除用具と一緒に当番ノートが廻って来る。ノートには日付、担当者名、ゴミの種類を記入する欄があらかじめ書いてあり、当番を終えたらハンコかサインをして次の人に渡すのだが、日付を見たら1週間先の日付になっていた。多分、町会費を渡したお婆さんが記入したと思うのだが、もう80歳を超えておいでなので勘違いされたのだろう。曜日によって出せるゴミの種類は決まっているのだが、時々曜日を勘違いして置き去りになったゴミを見かける。老いる、とはこういう事なのだ。私の班は8名なのだが、一人暮らしのお婆さんが2人、歩いても3分位の場所にゴミ収集所があるのだが、お婆さんは自転車にゴミを積んで捨てている。歩くのがしんどいのだろう。日本中に一人暮らしのお婆さんやお爺さんの日常は、こんな失敗の繰り返しだと思う。老人にとって、昔と今とどちらの時代が良かったのだろうか、と考えてしまった。もう戻ろうにも戻れないのだが。「起きたけど 寝るまで特に 用はなし」(老人川柳から借用)


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